那覇の第11管区海上保安本部の発表によれば、1月1日午後2時25分(朝日報では26分)頃、台湾の救難調整本部より遭難者の救助要請があり、海上保安庁のヘリコプターが出動、現場海域を捜索したところ、午後2時53分頃、尖閣諸島魚釣島の南約22km沖の領海線付近の海上で熱気球を発見、午後4時13分頃、巡視船2隻により墜落気球近くの領海内を漂流していた中国籍の男性一人が救助された。

救助されたのは、中国河北省唐山市在住の35歳の調理師で、同日午前7時頃、福建省福清市を離陸、熱気球は一人乗りで、魚釣島への上陸を目指していたと証言しているとのこと。男はGPS機器及び無線と携帯電話を所持、救助要請は自らが無線を使用して行ったという。

海上保安庁は、魚釣島への上陸行為を確認できず、着水地点も不明なことから入管法違反には問えないものと判断、外交ルートで協議の結果、午後7時48分頃、魚釣島の西26kmの接続海域を航行中の中国海警局の監視船「海警2115」に男の身柄を引き渡した。このとき海警側から謝意があったといい、産経新聞は共同ソースを使用しながら記事タイトルで若干の印象操作を行っている。

一方、NHKは、

中国海警局の船は日頃、尖閣諸島沖の領海に侵入し、日本の巡視船が警告するなどしていますが、今回は双方が協力する形となりました。

と、台湾をさり気なくハブりつつ日中間の美談風まとめ。


中国報道などによれば、熱気球に乗っていたのは、河北省の料理人で熱気球操縦士の許帥軍(许帅军)という男。「中国航空運動協会」に所属し、2012年12月に、地元、河北省唐山から290km対岸の遼寧省大連まで、4時間20分かけての渤海湾横断を成功させるなどしている有名人らしい。昨年9月には自身の微博にて熱気球で魚釣島を目指す計画を明らかにしている。

「神奇的不死鸟」という厨二臭いハンドルネームで、台湾の気象系フォーラムにも一時在籍していて、台湾海峡上空の気象特性について尋ねている。もともとは台湾海峡横断を考えていたらしい。行き先を魚釣島に変更することにしたのは、馬ぁたんとこが許可しなかったか、甲午戦争120年のイベントイヤーでこっちのが稼ぎがでかいと踏んだか。


Twitterでの反応を探してみたら、

…などと、ヒゲの人が迂闊なことを書いているのを見つけたけど、台湾外交部の発表によれば、気球が墜落したのは魚釣島の南17海里(31.5km)の海上で、台湾の(主張する)管轄海域に相当するが、日本に対して救助要請を行ったのは人道的理由からで、日台間には海難救助活動の際、日本の海保と台湾の海巡を状況に応じて相互的に運用する取り決めがあるとのこと。

一方、台湾海岸巡防署は、午後1時30分頃(台湾時間)に熱気球墜落の通報を受け、2時に現場海域へ艦船を派遣、しかし到着したのは日本による救助活動が終了した後だったとしている。
香港凤凰卫视によると、海巡署報道官の謝慶欽は海保に対する救助協力要請の存在そのものを否定しているという。

中国外務省は2日、秦剛報道局長が定例記者会見にてこの件に言及、男については「熱気球の愛好者だ」と繰り返し、政治的背景を否定、「中国海警局の船がすぐに付近の海域で捜索に全力を挙げた」としているが、日台の報道からは、中国海警が救助活動に参加した事実は確認できなかった。


…この事件、第一報から意味不明過ぎるところが多くてひっかかってばかりいる。
世間の関心は概ね、台湾が日本に救助活動を丸投げした政治的意味についてのみ注がれているが、そもそも、何故、台湾だけが熱気球の遭難に気付くことができたのだろうか。


3日付、中國時報によれば、台湾当局は熱気球の遭難を中国からの通報で知ったとしている。

海巡署昨天表示,我方國搜中心是在前天下午1時26分獲報,1名福建籍男子搭乘熱汽球,在釣魚台海域17浬處意外落海,大陸希望我方協助救援。海巡署隨即在下午2時,協調派出距離最近的謀星艦前往搜救。

通報を受け取ったのは國搜中心、つまり台湾行政院だったらしい。日本の報道では救助要請は気球に乗っていた男が自ら無線を使用して行ったとしているが、どうも事実は異なるようだ。

ちょっと検証してみたい。

  →Candielost: 魚釣島に熱気球。 (2)


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