山梨は言わずと知れた果樹王国だが、柑橘類はあまり栽培されておらず、もらった手紙に「骨折した」と書いてあったので、みかんが良いと思った。オレンジや温州みかんが多く含むカロテノイド「β-クリプトキサンチン」には、近年様々に健康効果が謳われていて、そのひとつに骨粗鬆症の予防可能性を示すものがあったからだ。この手の話で信頼できるものはそう多くないと思うけど。
それで、美味しいみかんの口コミなんかを集めてみたのだけど、みかんって、安いんだよね。いわゆる高級ブランドみかんでも、何千円とかするわけじゃない。贈る相手は高齢の女性で、もう何年も年賀状のやり取りくらいしかしておらず、家族構成もよく分からない。そんな相手に10キロも20キロも箱でみかんを送りつけるのは迷惑だろう。美味しいみかんてすぐにカビるからな。
考えあぐねていたところ、「紅まどんな」というみかんが目にとまった。
正確には温州みかんではない。「南香」と「天草」というタンゴール二種を掛けあわせて作られた品種で、温州みかんとオレンジ双方の特徴を併せ持つ。販売元の説明書きにはスマイルカットで食べろとあり、皮をむいてそのまま食べられる温州みかんより、オレンジや伊予柑に近いもののようである。
外皮が厚いのであれば、日持ちも少しは期待できる。何より一個あたり数百円と、お値段がいい。
さっそくポチって送ったのだが、自分でもひとつ食べてみたくなって、デパ地下にある高級フルーツ店とかにならあるだろうと思って行ってみたらあった。一個、900円くらいした。さすがにみかん一個に出せる値段じゃないなと思って買わずに帰ったのだが、そのあと近所のスーパーでも売っているのを見つけた。
大きいのは二個580円、小さいのは一個158円だった。
デパ地下で見かけた高級品との価格差に、同じ品種のみかんなのかと疑いたくなるが、すべて店頭では「紅まどんな」として売られていたものだ。買ってきたものを比較すると、大きい方は果皮に独特の香りがあり、小さい方にはない。
食べ方にある通り、スマイルカットにしてみた。オレンジとは違って薄皮の存在はほぼ感じられず、そのせいで少しカットしづらい。
食べてみた感想は、「あっさりしたオレンジ」といった感じ。酸味や苦味が少なく、甘さも控え目。この時期の柑橘類はだいたい糖度の高さを売りにしているので、あまり甘くないと感じるのは規格外のB級品だからかもしれない。「紅まどんな」はもとより選別品種で、規格外のものは「あいか」という品種名で流通するようだが。
パッケージにあった「プルプル食感」とか「ゼリーみたいな」とかいう謳い文句には、それに、「やや固めで弾力のあるもの」を思い浮かべる派閥に属するものとしては違和感を覚える。
やはり一個900円出さねばならんかね…。