名前のわからない道具と、その正体。
この、銀杏の葉のような、魚のヒレのような形をしたものはなんだろうか。
何かの道具だと仮定して、建具屋さんで使われていたものであることだけはわかっているので、菱形の木組みを足掛かりに、いくつか建具屋さんのサイトをめぐってみた。すると、建具の技法のひとつである、「組子」とか「指物」とか呼ばれる、細木を格子に組み合わせた細工ものを取り扱う建具屋さんのサイトの画像に、これとよく似たものがあるのをみつけた。
道具じゃなかった。
これは、投網組子という、建具ではよく使われる意匠のひとつらしい。吊るし干しの漁網を象った、干網組子というものもある。建具の世界に明るい人に尋ねたなら一発だったろう。
香流で見たものは障子に組み込むものにしてはサイズが大きく、細工も大味なので、職人教育用の見本としたものか、あるいはどこかで看板代わりに使われていたものかもしれない。投網の意匠は富を漁る縁起物として、酉の市の「熊手」同様、商売人に人気があったのではないか。