台湾海巡署の発表によれば、墜落した熱気球に乗っていた男を救助したのは日船「沖繩號」、すなわち海上保安庁の巡視船「おきなわ」だったらしい。 日本側報道には見当たらないが、海上保安庁の発表にはあったのだろうか。

巡視船「おきなわ」は「ヘリコプター1機搭載型巡視船(PLH)『つがる』型」で、その名の通り、ヘリコプターを一機、標準搭載している。従って事件当日、この船がどこにいたかによって、報道の印象がかなり違ってくるだろう。


巡視船「おきなわ」は、海上保安庁が2013年に巡視船「ちくぜん」を改修し、増える中国公船の領海接近に対応するため第11管区那覇海上保安部に転属させたもので、船体の建造年は1983年と、かなり老朽化している。排水量3100tの大型船で、航行速度も20ノット(約37km/h)程度でしかなく、人命救助等の機動性を要する任務に向いた船ではない。そのため巡視船「ちくぜん」は、1999年3月には能登沖で北朝鮮のものと思われる不審船を取り逃す失態を晒している。

事故当日の時系列から見て、巡視船「おきなわ」が那覇港にいなかったことは確実だ。
尖閣警備では石垣港が前線基地になっていて、全国から集められた海保の巡視船が中国漁船の違法操業等の取り締まりにあたっている。当日は、巡視船「おきなわ」も石垣港にいたか、尖閣周辺の海で警備任務に就いていた可能性が高い。

熱気球墜落前の1日午前10時52分、共同通信が中国公船3隻の尖閣沖接続水域侵入を報じている。


沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で1日、中国海警局の船3隻が航行するのを海上保安庁の巡視船が確認した。中国当局の船が尖閣周辺を航行するのは昨年12月29日から4日連続。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、3隻は「海警2102」「海警2151」「海警2337」。巡視船が領海に近づかないよう警告している。

その頃既に「哈罗CQ火腿社区」では問題のAPRSデータを基に熱気球の追跡が行われていた。
トピックには鍵がかけられており、フォーラムメンバー以外、閲覧はできない状態ではあったが、中国当局が魚釣島行きの熱気球の存在に気付いていた可能性はある。

中国外務省は2日の定例記者会見において、事故当時は中国海警局の船も現場海域で遭難者の捜索に全力を挙げたと主張している。実際はどうだったのだろうか。


熱気球が魚釣島の南海上で発信を絶つ直前、百度贴吧にも熱気球追跡スレッドが立った。既に当該スレッドは消されているが、Googleキャッシュを確認してみたところ、当日の中国海警船の動向に関する興味深いやりとりが記録されていた。



…この蓝清なんちゃらいう人、何故か東シナ海に展開中の海警船の位置をリアルタイムで把握できている(偵察衛星の情報を得ることのできる立場にあるようだ)。1日共同報とは登場する船名に食い違いが見られるが、海保の発表のものは接続水域に侵入した海警船であることに注意が必要。 「海警2112」は12月29日に「海警2337」「海警2151」と共に魚釣島領海内に侵入している。

14時04分の時点では、熱気球の発信途絶地点の一番近くを航行していたのは「海警2112」で、現場海域からは44.3km離れていたとのこと。どうやらこの時点では、3隻の海警船は魚釣島の西〜北側を航行していたようだ。



「今、脚盆(日本)側に動きがないか確認している」と言っているので、東シナ海で、海警船以外の艦船の位置を補足する手段が別にあるらしい。なんだろう。ちなみに「脚盆(足ダライ)」というのは日本の蔑称のひとつで、発音が"Japan"と似ている(jiǎopén)からということらしい。翻訳が面倒になるからそういうのやめて欲しい。

14時11分、「熱気球は日本側『識別区』で発信を断ったようだが、中国海警船は、まだ中国の『東海識別区』の内側を航行している」とのこと。この人の言う「東海識別区」が具体的に何を表しているのかが不明で状況が読みづらい。



楼主(スレ主)に「熱気球は雷达(レーダー)に映るか」と訊かれて「映らない」と即答。実際、難しいとのこと。発信機の方にツッコミ入れなくて良いのかと思うのだが、アマチュア無線帯域までいちいち全部傍受してる暇な軍隊もねぇよってことだろうか。

14時21分、魚釣島にいた海警船が、海保の巡視船の後を少し離れて追いかけるような動きを見せはじめたとのこと。この部分、要諦は海保船の動向にあるようだが、この海警船は「海警2112」ではないのだろうか。


…残念ながら、Googleキャッシュが取得時「2014年1月1日 05:25:10 GMT」のものなので、このやりとりの続きは不明。報道通りなら、海上保安庁に台湾当局より墜落熱気球の救助要請が出されるのはこの直後のことだ。




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